脳卒中予防・フォローアップ外来

脳卒中予防・フォローアップ外来について

当院では脳梗塞や脳出血など脳卒中の発症・再発予防に力を入れています。これらは一般的に生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常など)が大きく関与しています。生活習慣病は何気なく普通に過ごしている生活環境の中に隠れている様々な要因が重なり起こるものです。毎日忙しい生活を送られている中、健康診断で指摘されるも具体的に何に気をつければ良いのかわからない…とおっしゃる方も多くいらっしゃいます。また、既に治療されお薬を服用されている方もいらっしゃると思いますが、お薬の治療だけでは充分ではありません。
血圧が高い、コレステロールが高いなどは比較的評価されやすく気付かれやすいものですが、血糖に関わる病態は自覚症状も少なく糖尿病になるまで気付かれないことが少なくありません。実は血糖は身体にとって、それ以前から影響を及ぼしているのです。

【図】脳梗塞・動脈硬化の写真

高血糖(特に食後高血糖)と脳卒中との関係

私たちの体はブドウ糖を主たるエネルギー源(特に脳は全体の約20%)として利用しています。とは言え、ブドウ糖(主として炭水化物)ばかりを摂っていると、食後高血糖となり血糖値スパイクとして全身に酸化ストレス(グリケーション)を引き起こし、神経細胞や血管を傷める要因となります。私たちの食事は自覚無くこのような食後高血糖になっていることが多く、長い間この状態が続くと脳卒中や心筋梗塞など血管障害を引き起こす要因となっていきます。

【図】食後高血糖と血管障害

近年、朝食を抜いてしまう方が多くいらっしゃいますが、一食抜くとその後の食事の時に食後高血糖を起こしやすくなります。グラフ1は朝食の摂取回数と脳卒中のリスクを調べたデータです。
摂取回数が少ないほど全体の脳卒中、特に脳出血のリスクが高くなることが示されています。

【図】朝食摂取回数と脳卒中リスク

また、グラフ2は糖尿病の患者さんでの食事3回と朝食を抜いた食事2回の比較データですが、朝食抜きでは明らかに食後高血糖になるのです。

【図】糖尿病患者さんにおける朝食抜きの影響

空腹時低血糖の影響

また食後高血糖の後、数時間後には食前より血糖が下がってしまう、いわゆる空腹時の低血糖は殆どの方にみられます。

【図】血糖値変動グラフ

これは食後高血糖のために過度なインスリン(血糖を下げるホルモン)の分泌により起こるものです。この時、私たちの身体はできるだけ低血糖を回避するために血糖を上げるホルモン(インスリン拮抗ホルモン)を数種分泌します。この状況はさらに血管を収縮させ心拍数を上げるなど血圧変動にも影響を及ぼすため、血管障害の要因にもなります。

このように食後の高血糖、空腹時の低血糖のいずれも脳の神経細胞、血管に悪影響を及ぼすものとなります。そのため血糖は上がり過ぎず、下がり過ぎずの安定が必要なのです。

【図】食後高血糖 ― 空腹時低血糖

脳卒中予防の食事・栄養について

糖尿病などは血糖値のコントロールが重要ですが、血管を丈夫にする重要な栄養素はタンパク質です。また血管や脳の神経細胞は常にストレスを受け続けており、それを軽減するのは抗酸化物質(ビタミンC,Eなど)です。私たちの身体は多くのストレスを受けており、これにより多くの栄養素が消費されています。そのため予防において特に重要なのは身体の根本的な礎となる食事(栄養)です。飲み込みが良くない、なかなか食べられないなど栄養素が充分に摂取できない場合は特に注意が必要です。このような場合は栄養素の摂り方・摂るものにも気をつけなければいけません。血糖値急上昇の原因は「早食い」もあげられます。早食い防止にはしっかり噛むことが必要ですが、噛むことはそのほかにも脳血流量の増加や消化を良くするなどのたくさんの良い働きがあります。当院では未病の状態からの予防のための助言や治療、また脳卒中の既往のある方の再発予防まで、お薬に限らず生活、特に栄養の面を重視した診察・アドバイス・治療に加え、さらに飲み込み(嚥下)など食事摂取に重要な機能の問題についての評価・アドバイスのため摂食嚥下外来も行っています。
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