コラム

殿様枕症候群 (Shougun pillow syndrome)

国立循環器病研究センターからとても重要な研究結果が発表されました。

高い枕を使用している方は脳卒中(特発性椎骨動脈解離)の危険性が高くなるというものです。具体的には53人の特発性椎骨動脈解離の患者さんの枕の高さを調べたところ、12cm以上が18人(34%)、15cm以上が9人(17%)と明らかに枕の高さが高ければ高いほど危険性が上がるという結果です。

椎骨動脈とは首の骨(頚椎:第1~7頚椎)の両側を貫くように走行している脳の後側(脳幹・小脳や後頭葉)に血液を供給している重要な血管です。特発性椎骨動脈解離は内膜・中膜・外膜の3層構造を持っている動脈が何らかのストレスにより過進展(引っ張られる)となると血管の3層構造に損傷が生じ剥がれるような状態になり、結果として血管が詰まる(脳梗塞)又は血管が切れる(脳出血)となるものです。過度に首を動かす、首に過度な衝撃が加わるスポーツ外傷や交通事故などによっても起こる可能性があります。

今回の研究発表のように、枕が高くなり頭が起き上がるような姿勢で頚椎が前に曲がっている状態が続くことで椎骨動脈にストレスがかかり血管の損傷をきたす可能性は高くなります。当院でも特発性椎骨動脈解離を発症する方は近年少なくないと感じています。症状は後頚部や後頭部の痛み、めまいなどです。突然これらの症状がみられる、これらの症状が続いている場合はMRI、特にMRA(血管の状態を把握する検査)が必要となります。

寝ている間の枕が高い場合、起きた後の首の痛みや頭痛、手の痺れなどとの関連もあります。

寝ている時だけではなく、日中の首の位置・姿勢も頭痛や首こりの要因です。日頃から意識をしてメインテナンスをしていきましょう。

(参考文献)https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/23969873231226029